京都大学では、社会学分野の教員とその指導学生が、さまざまな学部・研究科等に点在しています。
そこで、それらの教員・学生の「横のつながり」(社会学環)を活性化することをめざして、
京都大学アジア親密圏/公共圏教育研究センターでは、「Welcome to 社会学」という研究会(リレー講演会)を開催しております。
毎回、学内の社会学分野の教員1名に講演していただき、その後、聴衆の教員・学生を交えて自由闊達な質疑応答を行います。
(Zoomによるオンライン同時開催、学外の教員・学生も参加可)
このたびの第6回は、歴史社会学がご専門の直野章子先生(人文科学研究所)にご講演いただきます。
(詳細を記載したポスターPDFを添付しております。)
ぜひご参加ください!
■「Welcome to 社会学」第6回(オンライン同時開催)
日時:2025年2月21日(金)13:15~14:45
場所:社会学共同研究室(文学部校舎5階)
講演者:直野章子先生(人文科学研究所)
テーマ:「被爆者」の誕生
概要:
「被爆者」は原爆投下直後に誕生したのではない。本講義では、その生成過程と変容を、イアン・ハッキングの「人びとを作り出す」という理論を参照しながら検討する。ハッキングは、ある特性をもつ人びとを記述し、価値判断を加えるような新たな科学的概念が作られ広まることで、新しい「人びとの種類」が出現すると論じる。そこに分類された人びとは、新たな自己認識を持つようになり、その結果、行動が変化するというのである。
原爆の被害を受けた人びとは、放射線の影響調査の対象とされ、ここに「被爆者」という新たなカテゴリーが構築された。さらに、日本の法制度により、放射線の影響を受けた可能性のある人びとが、医療援護の対象である「被爆者」として位置づけられた。このカテゴリーに分類された人びとは「被爆者」としての自己認識を持ち、行動するようになった。こうして「被爆者」という「新しい種類の人びと」が作られたのである。
また、「被爆者」に分類された人びとは、集合行動を通じてその概念を変容させていく。これは、ハッキングが「ループ効果」と呼ぶ、概念やカテゴリーと人びとが相互に影響を及ぼし合う現象である。被爆者たちは苦しみを共有しながら補償を求める運動を展開し、「ふたたび被爆者をつくらない」という使命を掲げるようになった。このようにして、「反核平和」を象徴する存在としての被爆者という、新たな社会的アイデンティティが確立されたのである。
■ 事前登録(全員必須)
参加希望の方は、下記のURLから事前登録をお願いします。
登録者にはZoomのURLをメールでお送りします。
https://kyoto-u-edu.zoom.us/meeting/register/tJ0td-Grqz4pHtf1k6Iu8GlyNnC8_bIBvpCt