第13巻 安里和晃 編『国際移動と親密圏 ケア・結婚・セックス』

Date/Time : 2018/01/05,Friday 

Place : 

シリーズ「変容する親密圏/公共圏 13」京都大学出版会
『国際移動と親密圏 ケア・結婚・セックス』 安里 和晃 編

A5上製・318頁・税込 4,536円 ISBN: 9784814000722

発行年月: 2018年1月下旬発売予定

 

 

内容

家事労働、性労働、結婚移民などの国際移動によって、受容する社会の親密性が大きく再編される。この新しい親密性の多様化を支える公共の論理とは何か。

目次

はじめに [安里和晃]

第Ⅰ部 理論編

第1章 親密性の労働と国際移動 [安里和晃]
はじめに
1 親密性の労働の性質と3つの外部化
1―1.ケアの外部化―市場化
1―2.ケアの外部化―社会化
1―3.ケアの外部化―農村/都市と世代間分業
2 親密性の労働の再構築
2―1.親密性の生成
2―2.親密な社会関係の商品化1―エンターテイナー
2―3.親密な社会関係の商品化2―国際結婚の斡旋
2―4.親密圏を横断する人々
3 脆弱性の克服―親密圏・公共圏と市民社会

第2章 現代日本におけるジェンダ
ー構造と国際結婚女性のシティズンシップ [髙谷 幸]
はじめに
1 在日国際結婚女性をめぐる議論―構造と「主体」
2 シティズンシップの構築―ジェンダー・人種・階級の交差性
2―1.「包摂と排除の弁証法」としてのシティズンシップ
2―2.シティズンシップ獲得における経路依存性
2―3.日本における人種・ジェンダー・階級
3 国際結婚女性のシティズンシップ
3―1.結婚を通じたシティズンシップ
3―2.国家のモラルエコノミー
3―3.広がるシティズンシップの実践
4 階級化するシティズンシップ
4―1.増加する離婚と母子世帯
4―2.階級としての婚姻地位
4―3.既存のジェンダー構造とその変革
おわりに

第3章 「不法滞在」をする側の論理
―とくに性風俗産業で働く人びとについて [青山 薫]
はじめに
1 女性の移住―経済活動の奨励と性労働の可能性
2 人身取引の問題化と「不法残留者半減計画」
3 性取引にたずさわる人びとの論理
3―1.‌2005年法改正の影響―ネットワークの喪失と選択肢の下方限定
3―2.「生本番」―性感染症の危険を招く市場の要請
3―3.「偽装結婚」―移住女性のエージェンシーを取り締まる
おわりに

第Ⅱ部 親密性の労働の国際化の現状

第4章 韓国におけるケア労働市場及び移住ケアワーカーの位置付け
[李 恵景,翻訳 左海陽子]
はじめに
1 背景
2 ケア労働市場及び移住ケアワーカー
3 新しいLTCIE制度
3―1.長期的なケア利用者にとってのケア提供者
3―2.ケアワーカーの労働条件
4 LTCIE制度の効果
5 韓国における現在の外国人療養保護士数
おわりに

第5章 台湾におけるケアの不足と外国人労働者・結婚移民
[王宏仁,翻訳・編集 左海陽子]
1 台湾におけるケア不足
1―1.人口動態の推定
1―2 外国人労働者の雇用の傾向
2 ケア不足への対処
2―1.中流階級は市場サービスを利用
2―2.介護をおこなうのは誰なのか
3 結婚移民とケア
3―1.台湾における結婚移民
3―2.低福祉の体制とケア従事者の不足
3―3.移民の妻とケア従事者の不足
3―4.中国大陸/ベトナム出身の結婚移民
4 結婚移民の実態
4―1.嫁と家事労働者の二重負担
4―2.育児をめぐる不和
4―3.高齢の家族の介護をめぐる不和
4―4.家事をめぐる不和
おわりに

第6章 親密性の労働を担う「JFC」 [原めぐみ]
はじめに
1 再生産労働から親密性の労働へ
2 調査参加者の背景と方法論
2―1.「JFC」とは誰か
2―2.法的地位と国籍(再)取得
2―3.調査方法と調査参加者プロフィール
3 移動の動機と移住過程
3―1.移動の動機
3―2.移住過程
3―3.職業選択
4 親密性の労働に伴い生じる問題
4―1.下層階級化するJFC母子
4―2.教育による社会上昇への弊害
4―3.親密性への期待
おわりに

第7章 セーフティネットとしての故郷
―非都市部に生きるマレーシア華人家族の再生産労働と生存戦略 [櫻田涼子]
母性愛の欠如?―女性の就労と再生産労働の空間的分離の検討
1 移民社会マレーシアにおける華人というアンビバレントな存在
1―1.ケアの網からこぼれ落ちるもの,それを受け止める伝統的相互扶助組織
1―2.マレーシアにおける経済構造の再編
1―3.女性の労働力率の上昇と母性規範の不在?
2 故郷と都市を移動する華人女性の実践
2―1.アホイの場合
2―2.アユーの場合
2―3.ペニーの場合
2―4.シーナの場合
3 女性親族間関係の維持と養老実践としての子ども養育
おわりに

第Ⅲ部 脆弱性の克服

第8章 ラブ・ゲイン―シンガポールの住み込み外国人家事労働者にみる親密性の変容 [上野加代子]
1 関心の所在
2 親密性を規定する構造的要因
3 調査方法
4 親密性,お金,交渉
おわりに

第9章 東アジアにおける移民労働と市民社会 [五十嵐誠一]
はじめに
1 分析視角の検討
1―1.生産領域・再生産領域の国際分業
1―2.政治システムと経済システムの介在
1―3.市民的公共圏と市民社会の成長
1―4.シビル・レギュラシオンとシビル・ガバナンス
2 東アジアの移民労働政策とグローバルな移民労働レジーム
2―1.労働基準法と労働基本権
2―2.移民労働に関わる国際レジーム
3 受入国の市民社会
3―1.香港の市民社会
3―2.台湾の市民社会
3―3.シンガポールの市民社会
3―4.タイの市民社会
4 AESANと市民社会ネットワーク
4―1.成長する市民社会ネットワーク
4―2.ASEAN憲章とSAPA
4―3.TFAMWの政策提言活動
4―4.ASEAN移民労働フォーラムへの関与
5 メコン地域と市民社会ネットワーク
5―1.「上」からのメコン地域主義
5―2.「下」からのメコン地域主義
おわりに

あとがき [安里和晃]
索 引
執筆者紹介

 

プロフィール

安里和晃(あさと わこう)[編者,第1章]
京都大学文学研究科文化越境専攻准教授
主な著訳書:「移民レジームが提起する問題―アジア諸国における家事労働者と結婚移民」(『季刊社会保障研究』51(3―4),2016年);「経済連携協定を通じた海外人材の受け入れの可能性」『日本政策金融公庫論集』30,2016年);“Incorporating Foreign Domestic Workers as Providers of Family Care: Case Studies of Hong Kong, Taiwan and Singapore”, in Ochiai, Emiko and Leo Aoi Hosoya ed., Transformation of the Intimate and the Public in Asian Modernity, 2014, Brill; “Nurses from Abroad and the Formation of a Dual Labor Market in Japan”, Southeast Asian Studies, 49(4), 2012;『労働鎖国ニッポンの崩壊』(編著,ダイヤモンド社,2011年)。海外講演については,OECD,アジア開発銀行,厚生労働省など多数。フィリピン政府在外フィリピン人委員会,フィリピンのNGO,京都市内の小中学校などと連携したフィリピン系移民に対する支援を実施する。2014年,フィリピン大統領賞受賞。

髙谷幸(たかや さち)[第2章]
大阪大学大学院人間科学研究科准教授
主な著訳書:『追放と抵抗のポリティクス―戦後日本の境界と非正規移民』(ナカニシヤ出版,2017年),「近代家族の臨界としての日本型国際結婚」(大澤真幸編『岩波講座 現代9 身体と親密圏の変容』岩波書店,2015年);「〈親密圏〉の構築―在日フィリピン人女性支援NGOを事例として」(『社会学評論』62(4),2012年)

青山薫(あおやま かおる)[第3章]
神戸大学大学院国際文化学研究科教授
主な著訳書:Asian Women and Intimate Work, eds. with Ochiai, E., Brill, 2014; Thai Migrant Sex Workers from Modernisation to Globalisation, Palgrave/Macmillan, 2009;『「セックスワーカー」とは誰か―移住・性労働・人身取引の構造と経験』(大月書店,2007年)

李 恵景(イ・ヘギョン)[第4章]
培材大学校公共政策学部教授(Professor, Dept. of Public Policy, Pai Chai University)
主な著訳書:Immigration Policy, Seoul: Park Yong Sa, 2016 (Lee, Hye-Kyung, et. al, in Korean) (이혜경, 이진영, 설동훈, 정기선, 이규용, 윤인진, 김현미, 한건수 (2016) [이민정책론] 박영사); “The Labor Market Integration of Migrants in S. Korea: A Comparison by Ethnicity or Source Country”, in APPI Working Paper Series, 2017; “Research Trends in International Migration and Multicultural Studies in S. Korea”, Korean Society, 15(1) (in Korean) (이혜경 (2014) “국제이주ㆍ다문화연구의 동향과 전망”『한국사회』15(1)), 2014; “Employment and Life Satisfaction among Female Marriage Migrants in South Korea” Asian and Pacific Migration Journal, 22(2), 2013; “Preference for Co-ethnic Groups in Korean Immigration Policy: A Case of Ethnic Nationalism?” Korea Observer, 41(4), 2010.

王 宏仁(ワン・ホンゼン)[第5章]
国立中山大学社会学部教授(Professor at the Department of Sociology, National Sun Yat-sen University)
主な著訳書:“Discourses on Non-conforming Marriages: Love in Taiwan”, in International Journal of Japanese Sociology, (co-authored with Mei-hua Chen), 2017;『巷子口社會學(Streetcorner Sociology in Taiwan)』台北:大家出版社,2014; “Becoming a Migrant in Asia: Evidence from Vietnamese Peasants’ Emigration”, Pacific Affairs, 86(1) (co-authored with Daniele Belanger), 2013; Politics of Difference in Taiwan. London and New York: Routledge. (co-editor with Tak-wing Ngo), 2011.

左海陽子(さかい ようこ)[第4章翻訳,第5章翻訳・編集]
京都大学野生動物研究センター・特定職員/京都造形芸術大学文明哲学研究所・客員准教授
主な著訳書:「フェミニズムにおける「私」と「公」のダイナミクス」(古谷野郁・左海陽子訳),落合恵美子編『親密圏と公共圏の再編成―アジア近代からの問い』京都大学学術出版会,2013;「フェミニズムとジェンダー政策の日独比較論」(山本耕平・左海陽子訳),落合恵美子・橘木俊詔編著『変革の鍵としてのジェンダー―歴史・政策・運動』ミネルヴァ書房,2015

原めぐみ(はら めぐみ)[第6章]
和歌山工業高等専門学校総合教育科助教
主な著訳書:「表象としての女性」(共著,宮原曉編『東南アジア地域研究入門2 社会』,慶應義塾大学出版会,2017年);“Japan as a Land of Settlement or Stepping stone for 1.5-generation Filipinos”, in Itaru Nagasaka and Asuncion Fresnoza-Flot eds, Mobile Childhoods in Filipino Transnational Families: Migrant Children with Similar Roots in Different Routes. London: Palgrave, 2015 (co-authered with Takahata Sachi);「フィリピン人―「主婦」となった女性たちのビジネス」(共著,樋口直人編『日本のエスニック・ビジネス』,世界思想社,2012年)

櫻田涼子(さくらだ りょうこ)[第7章]
育英短期大学現代コミュニケーション学科准教授
主な著訳書:『食をめぐる人類学―飲食実践が紡ぐ社会関係』(編著,昭和堂,2017年),「越境する『故郷の味』―オーストラリアにおけるマレーシアの飲食文化の展開」(阿良田麻里子編『文化を食べる,文化を飲む―グローカル化する世界の食とビジネス』,ドメス出版,2017年);『「華人」という描線―行為実践の場からの人類学的アプローチ』(編著,風響社,2016年);Rethinking Representation of Asian Women: Changes, Continuity, and Everyday Life(編著,Palgrave-Macmillan 2016)

上野加代子(うえの かよこ)[第8章]
徳島大学大学院総合科学部教授
主な著訳書:『国境を越えるアジアの家事労働者』(世界思想社,2011年);「福祉の研究領域における構築主義の展開」(『社会学評論』269特集号,2017年);「『児童福祉から児童保護へ』の陥穽―ネオリベラルなリスク社会と児童虐待問題」(『犯罪社会学研究』41,2016年);『児童虐待の社会学』(世界思想社,1996年)

五十嵐誠一(いがらし せいいち)[第9章]
千葉大学大学院社会科学研究院准教授
主な著訳書:『東アジアの新しい地域主義と市民社会―ヘゲモニーと規範の批判的地域主義アプローチ』(勁草書房,2018年),The New International Relations of Sub-Regionalism: Asia and Europe(co-edited with Hidetoshi Taga, Routledge, forthcoming),『民主化と市民社会の新地平―フィリピン政治のダイナミクス』(早稲田大学出版部,2011年),「市民社会」(山本信人編『東南アジア地域研究入門 3政治』,慶應大学出版会,2017年),「フィリピンにおける新たな政軍関係の展開―『市民的文民統制』は可能か」(酒井啓子編『途上国における軍・政治権力・市民社会―21世紀の「新しい」政軍関係』,晃洋書房,2016年),「東アジアの市民社会と新自由主義グローバリゼーション―オルタナティブな東アジア共同体に向けて」(三宅芳夫・菊池恵介編『近代世界システムと新自由主義グローバリズム―資本主義は持続可能か?』,作品社,2014年),“The Developing Civil Public Sphere and Civil Society in East Asia: Focusing on the Environment, Human Rights, and Migrant Labor”(Emiko Ochiai and Hosoya Leo Aoi, eds., Transformation of the Intimate and the Public in Asian Modernity, Brill, 2014)

contributor : Secretaryhome organization : contact :