第8巻 小山静子・赤枝香奈子・今田絵里香 編『セクシュアリティの戦後史』

Date/Time : 2015/03/25,Wednesday 

Place : 

シリーズ「変容する親密圏/公共圏8」 京都大学学術出版会

『セクシュアリティの戦後史』 小山静子・赤枝香奈子・今田絵里香 編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A5上製・358頁・税込 4,320円

ISBN: 9784876983926

発行年月: 2014/07

 

 

書評

『図書新聞』2015年1月17日、評者:貞包英之氏

『家族社会学研究』Vol.27 No.2、評者:三部倫子氏

『昭和女子大学女性文化研究所紀要』第43号、55-57頁、評者:福田委千代氏

内容

セクシュアリティ(性行動)は私的空間の奥に秘められたものであるだけではなく、むしろ社会的、文化的に形成されたものでもある。戦後日本における異性愛、同性愛に関するイメージの成立、マンガ・雑誌などのメディアにおける性の表象を考察しながら、セクシュアリティという概念が歴史的に形成されたものであることを明らかにする。

目次

序章 問題関心 [小山静子]

 

Ⅰ 純潔と異性愛

 

第1章 純潔教育の登場 ―男女共学と男女交際 [小山静子]

はじめに

1 私娼問題から男女交際・男女共学へ

2 『男女の交際と礼儀』の刊行

3 子どもの「問題」状況

4 純潔教育のゆくえ

おわりに

第2章 純潔教育委員会の起源とGHQ [斎藤 光]

はじめに

1 「次官会議決定」と文部省

2 GHQと純潔教育

1.街娼発生防止対策としての純潔教育の由来

2.文部省と民間情報教育局の交渉過程

3 通達「純潔教育の実施について」の意味

おわりに

第3章 異性愛文化としての少女雑誌文化の誕生 [今田絵里香]

はじめに

1 職業獲得から男女交際へ

2 少女たちの戸惑い/少年たちの無関心

3 編集者・執筆者による「明るい男女交際」の創出

4 男女交際におけるジェンダーの非対称性

おわりに

第4章 雑誌『平凡』に描かれた純潔 [中山良子]

はじめに

1 青少年が観る映画の問題化

1.「純潔の危機」が描かれる映画・小説・読者相談

2.「性的」映画への批判がつくる,青少年のセクシュアリティ規範

2 純潔について語る読者

1.農村に焦点をあてた座談会と純潔

2.太陽族映画の批判記事

3.純潔という価値観

3 『純潔のために』の登場

1.異例の冊子

2.売春防止法の成立と『純潔のために』

おわりに

第5章 「感じさせられる女」と「感じさせる男」 ―セクシュアリティの二枚舌構造の成立 [田中亜以子]

はじめに

1 男性知識人主導の「平等」

2 夫婦雑誌の流行

3 『夫婦生活』の世界

4 『主婦の友』の世界

おわりに―セクシュアリティの二枚舌構造とは何か?

 

Ⅱ 同性愛という概念

 

第6章 戦後日本における「レズビアン」カテゴリーの定着 [赤枝香奈子]

はじめに

1 女性同性愛者の表象

1.先行研究

2.「レスボス愛」

2 戦前から戦後へ―1940年代後半の雑誌記事

1.戦前との接合―エスのポルノ化

2.西洋との接合―「サッフィスト」と「トリバード」

3 「レスビアン」の登場―1950年代

1.キンゼイ報告の影響

2.「レスビアン」と「レズビアン」

4 日本の事例との結びつき―1960年代

1.「エス」と「レス」

2.「歌劇」「男役」との結びつき

3.レズビアン・バーの流行―ゲイ・バーとの結びつき

4.「フリーセックス」ブームの影響

おわりに

第7章 パンパン,レズビアン,女の共同体 ―女性映画としての『女ばかりの夜』(1961) [菅野優香]

はじめに

1 レズビアン表象

2 女性共同体

1.映画に描かれる女性共同体

2.映画を描く女性共同体

3 女性映画

おわりに

第8章 戦後日本における「ホモ人口」の成立と「ホモ」の脅威化 [石田 仁]

はじめに―本章の目的

1 群れる―1945年~1960年代

1.戦前と戦後の不連続性

2.群れて増える

3.“新語”の「ホモ」

4.「本当のホモ」

2 「ホモ人口」の成立―1970年代前半

1.都市に集まる

2.エビデンス

3.拡散のモチーフ

3 影響―1970年代後半~1980年代

1.Save our ……

2.漠とした不安

3.感染者数

おわりに―本章の意義

第9章 1970年代における男性同性愛者と異性婚 ―『薔薇族』の読者投稿から [前川直哉]

はじめに

1 異性婚と同性愛の「両立」

1.異性と結婚した動機,結婚を希望する理由

2.求められた結婚のかたち① 妻に隠れて同性と交際

3.女性からの反論

2 「理解ある妻」の物語

1.求められた結婚のかたち② 告白と理解ある妻

2.告白の失敗

3 女性同性愛者との結婚

1.求められた結婚のかたち③ 女性同性愛者との結婚

2.「薔薇族と百合族のお見合い会」

3.「お見合い会」の失敗

おわりに

 

Ⅲ メディアにおける性愛の表象

 

第10章 Kissのある日常 ―『週刊マーガレット』におけるキスシーンの定着過程 [日高利泰]

はじめに

1 キスシーンはいかにして可能か

1.少女雑誌の中の「性」

2.『週刊マーガレット』におけるキスシーンの登場

2 キスシーンの定着・展開

1.キスシーンの類型化

2.用例の拡大と意味づけの変化

3.『りぼん』におけるキスシーン

おわりに

第11章 1970~1990年代の『セブンティーン』にみる女子中高生の性愛表象の変容 [桑原桃音]

はじめに

1 ドラマ化される「ある少女」の性愛体験談 ―創刊年1969年~1979年

2 コメディー化される男目線のエッチ談義 ―1982年~1987年

3 ドキュメント化される読者みんなの性愛報告 ―1987年~1994年

おわりに

第12章 楽しむものとしての“性”はいかにしてもたらされたか

―1970~1980年代の『少女コミック』の場合 [トジラカーン・マシマ]

はじめに

1 1970年代の女性向けマンガにおける「性」

1.はじめてのベッドシーン

2.1970年代の『少女コミック』における性描写

2 読者投稿コーナーで語られる「性」:Cがしたい!

3 マンガで描かれる「性」:日常の中のちょっとしたエロから愛撫まで

おわりに

第13章 マンガにおける農村の「性」とジェンダー ―「むら」のファンタジー [一宮真佐子]

はじめに―農村という空間のイメージ

1 農村マンガにおける性描写

1.分析対象と視点―農村マンガについて

2.農村マンガにおける性描写のパターン

3.「ホラー・オカルト・ミステリー」パターン

4.「農村の不自由」を描く作品群

2 農村のセクシュアル・マイノリティ

1.マンガに登場したセクシュアル・マイノリティたち

2.村で生きるか,出ていくか

おわりに―「農村の性」に残り続けるジェンダー規範

第14章 女性ジャンルに表れる‘恋愛’と韓国女性 ―テレビドラマを通じて [朴 珍姫]

はじめに

1 韓国女性にとっての恋愛

2 韓国テレビドラマの‘恋愛’―メロドラマを通じて

1.韓国ドラマが‘恋愛’を描くまで

2.家族と‘恋愛’

3.セクシュアリティと‘恋愛’

おわりに

あとがき [赤枝香奈子・今田絵里香]

索 引

正誤表

正誤表(2014.7.24)PDF

 

プロフィール

小山静子(こやま しずこ)[編者,序章,第1章]

1953年生まれ,京都大学大学院人間・環境学研究科教授

主要著書:『家庭の生成と女性の国民化』(勁草書房,1999年),『子どもたちの近代』(吉川弘文館,2002年),共編著『戦後公教育の成立』(世織書房,2005年),共編著『「育つ・学ぶ」の社会史―「自叙伝」から』(藤原書店,2008年),『戦後教育のジェンダー秩序』(勁草書房,2009年),編著『子ども・家族と教育』(日本図書センター,2013年),Ryōsai Kenbo: The Educational Ideal of ‘Good Wife, Wise Mother’ in Modern Japan(Brill, Leiden, 2013)

 

斎藤 光(さいとう ひかる)[第2章]

1956年生まれ,京都精華大学ポピュラーカルチャー学部教員

主要論文・著書:「﹁性的フェティシズム﹂概念と日本語文化圏―呉秀三・谷崎潤一郎による﹁性的フェティシズム﹂の具現化まで」(田中雅一編『フェティシズム論の系譜と展望 フェティシズム研究1』,京都大学学術出版会,2009年),共編著『性的なことば』(講談社,2010年)

 

今田絵里香(いまだ えりか)[編者,第3章]

1975年生まれ,成蹊大学文学部講師

主要論文・著書:『「少女」の社会史』(勁草書房,2007年),「女子高校における女性性利用型成功志向」(木村涼子・古久保さくら編『ジェンダーで考える教育の現在―フェミニズム教育学をめざして』解放出版社,2008年),「京都大学の女性ポストドクター」(京都大学女性研究者支援センター編『京都大学 男女共同参画への挑戦』明石書店,2008年),「戦後日本の『少女の友』『女学生の友』における異性愛文化の導入とその論理―小説と読者通信欄の分析」(『大阪国際児童文学館紀要』24,2011年),「﹁少女﹂になる―少女雑誌における読むこと/見ること/書くことをめぐって」(『ユリイカ』45(16),2013年)

 

中山良子(なかやま よしこ)[第4章]

1978年生まれ,大阪大学大学院文学研究科博士後期課程

主要論文:「『乙女の性典』と純潔―新制中学生・高校生のセクシュアリティとメディア」(『日本学報』30,2011年),「不純異性交遊で補導される女学生の登場―『乙女の性典』と『少年の補導』」(文化/批評編集委員会編『文化/批評[cultures/critiques]』5,2013年)

 

田中亜以子(たなか あいこ)[第5章]

1982年生まれ,京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程

主要論文:「﹁妻﹂と﹁玄人﹂の対立と接近―性と愛と結婚を一致させるために妻に求められたこと」(『女性史学』20,2010年),「〈男の愛〉と〈女の愛〉―『女学雑誌』における愛とジェンダー」(『人間・環境学』21,2012年)

 

赤枝香奈子(あかえだ かなこ)[編者,第6章]

大谷大学文学部講師

主要論文・著書:「同性婚・パートナーシップ制度」(井上眞理子編『家族社会学を学ぶ人のために』世界思想社,2010年),『近代日本における女同士の親密な関係』(角川学芸出版,2011年)

 

菅野優香(かんの ゆうか)[第7章]

同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教員

主要論文・著書:「日本映画の規範性をめぐって―邦画メジャーとクィア映画」(『中央評論』270,2010年),“Eternal Virgin Reconsidered: Hara Setsuko in Context”(ICONICS, 2010),“Implicational Spectatorship”(Mechademia 6: User Enhanced, 2010),“Love and Friendship: The Queer Imagination of Japan’s Early Girls’ Culture”(Mary C. Kearney, ed., Mediated Girlhoods: New Explorations of Girls’ Media Culture, Peter Lang, New York, 2011)

 

石田 仁(いしだ ひとし)[第8章]

1975年生まれ,日工組社会安全財団主任研究員

主要論文・著書:「戦後日本の雑誌メディアにおける﹁男を愛する男﹂と﹁女性化した男﹂の表象史」(村上隆則と共著,矢島正見編『戦後日本 女装・同性愛研究』,中央大学出版部,2006年),編著『性同一性障害─ジェンダー・医療・特例法』(御茶の水書房,2008年),“Representational Appropriation and the Autonomy of Desire in Yaoi/BL”(M. McLelland, J. Welker and K. Suganuma eds., Boys Love in Japan, University Press of Mississippi, 近刊)

 

前川直哉(まえかわ なおや)[第9章]

1977年生まれ,東京大学大学院経済学研究科特別研究員

主要論文・著書:「明治期における学生男色イメージの変容」(『教育社会学研究』81,2007年),「近代学校と男性のセクシュアリティ形成」(小山静子・太田素子編『「育つ・学ぶ」の社会史―「自叙伝」から』藤原書店,2008年),『男の絆―明治の学生からボーイズ・ラブまで』(筑摩書房,2011年),「大正期における男性﹁同性愛﹂概念の受容過程」(『解放社会学研究』24,2011年),「学校での同性愛差別と教師の役割」(加藤慶・渡辺大輔編『セクシュアルマイノリティをめぐる学校教育と支援 増補版』開成出版,2012年)

 

日高利泰(ひだか としやす)[第10章]

1987年生まれ,京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程(日本学術振興会特別研究員DC1)

論文:「1960年代の少女誌における恋愛の主題化と﹁少女﹂の性的身体」(京都大学大学院人間・環境学研究科修士学位論文,2013年)

 

桑原桃音(くわばら ももね)[第11章]

1977年生まれ,龍谷大学社会学部実習助手

主要論文:「配偶者選択の歴史社会学のための文献研究」(1)(2)(『龍谷大学社会学部紀要』35,36,2009年,2010年),「平塚らいてうのロマンチック・ラブと近代家族に関する思想と実践にみる葛藤とゆらぎ―1890年代から1910年代を中心に」(『国際社会文化研究所紀要』14,2012年),「大正期における近代的結婚観の受容層―『讀賣新聞』﹁身の上相談﹂欄の結婚問題相談者の分析」(『ソシオロジ』58(1),2013年),「大正期における配偶者選択に関する歴史社会学的研究―『讀賣新聞』﹁身の上相談﹂欄にみる葛藤の分析」(龍谷大学大学院社会学研究科博士学位論文,2013年)

 

トジラカーン・マシマ(Mashima Tojirakarn)[第12章]

1984年生まれ,京都大学大学院文学研究科博士後期課程

主要論文:“Why Thai Girls’ Manga Are Not “Shojo Manga”: Japanese Discourse and the Reality of Globalization”(International Journal of Comic Art, 13―2, 2011),「タイにおける﹁日本少女マンガ﹂イメージの歪み:少女マンガ批判と表現規制の相乗効果」(『マンガ研究』18,2012年)

 

一宮真佐子(いちのみや まさこ)[第13章]

1972年生まれ,京都大学アジア研究教育ユニット研究員(特別教育研究)

主要論文:「ポピュラーカルチャーにおける農業・農村表象とその変化―現代マンガを対象として」(『村落研究ジャーナル』15―1,2008年)

 

朴 珍姫(ぱく じんひ,Jinhee PARK)[第14章]

1982年生まれ,京都大学大学院文学研究科博士後期課程

主要論文・著書:「黄金期韓国﹁純情漫画﹂の特徴―キャラクター表現を中心に」(『マンガ研究』16,2010年),「韓国版ドラマ『花より男子』の特徴―家族の物語としての『花より男子』」(伊藤公男・杉本淑彦編『ヴィジュアル・カルチャーの中の親密圏』(仮)京都大学学術出版会,2014年刊行予定)

 

 

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