第3巻 中村俊春 編『絵画と私的世界の表象』

Date/Time : 2015/03/25,Wednesday 

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シリーズ『変容する親密圏と公共圏3』京都大学学術出版会

『絵画と私的世界の表象』 中村 俊春 編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A5上製・340頁・税込 4,320円

ISBN: 9784876985784

発行年月: 2012/01

 

書評

『図書新聞』2012年4月7日、評者:尾崎彰宏氏

内容

美術における親密圏、すなわち、家族、母子、家庭のイメージを読むという課題設定のもと、さまざまな切り口によって、西洋と日本の近世美術、アジアの近現代美術の諸作品を考察している。子供、家族、家庭という伝統的な主題に絞り、親密圏をめぐる人間の関係性を主題とした美術作品が、どのように解釈できるかを明らかにする。

目次

第1章 家族,母子,家庭のイメージ読解のための序論[中村 俊春]

はじめに

1 ゴンクールと歌麿の描いた母子

2 久隅守景作「夕顔棚納涼図」の解釈をめぐって

3 17世紀オランダ肖像画に見る夫婦の関係

4 17世紀オランダの家庭と女性

5 虚構としての一族の肖像画

6 本書の内容に関して

 

第2章 聖なるもの,家族,政治—クラーナハ作「聖親族祭壇画」をめぐって[平川 佳世]

はじめに—聖なる家族の表象

1 クラーナハの描く「聖親族」

2 15,16世紀の北方ヨーロッパにおける「聖親族」の流行

3 「聖親族祭壇画」に見るザクセン選帝侯家の政治的思惑

 

第3章 家庭は至福の場か—17世紀オランダ風俗画における家族と家庭のイメージ[ジョン・ラフマン(深谷訓子訳)]

1 家庭内を描いた風俗画の流行とその背景

2 描かれた家庭場面の虚構と誇張

3 実像に迫る—家庭内の様子,各部屋の機能や調度

4 イメージ操作の方向性—作り出された「至福の場」

 

第4章 変容する幼年時代のイメージ—ネーデルラント美術における子供の肖像画とその影響[ミルヤム・ノイマイスター(吉田朋子訳)]

はじめに—17世紀ネーデルラントの風俗画に描かれた子供たちに託された意味

1 17世紀ネーデルラントの子供の肖像画—身分の誇示と愛情の表現

2 描かれた画家の子供たち—ルーベンスの場合

3 ヴァン・ダイクによる子供の肖像画

4 イギリスにおける子供の肖像画の展開—規範としてのヴァン・ダイク

 

第5章 伊勢物語絵に見る「男」と「女」—17世紀前半の作例における場面選択に関連して[安田 篤生]

はじめに—伊勢物語絵と「親密圏」

1 近世初期伊勢物語絵に描かれた二条の后—伝宗達筆伊勢物語図色紙「芥川」を中心に

2 伊勢物語絵の場面選択—絵と社会的背景

むすびにかえて

 

第6章 唐子遊図をめぐって[田島 達也]

1 日本絵画の中の子供たちと唐子

2 唐子の「かわいらしさ」

3 唐子の表される画題

4 唐子の受容された場

5 寺院と唐子図—天球院と霊鑑寺

 

第7章 絵画に見る雛祭の発展—江戸時代の家族の動向に注目して[宮崎 もも]

はじめに

1 上巳の節句行事の変遷

2 雛祭図に見る雛祭の発展

3 雛図に見る雛祭の発展

おわりに

 

第8章 家庭こそメディアの場所である—家庭内メディアの考古学[エルキ・フータモ(太田純貴訳)]

はじめに

1 視覚的なメディアと家庭内での設置

2 覗く習慣の諸様式

3 幻灯機(マジックランタン),影絵芝居と巻き取り式絵巻

4 家族を楽しませる少年興行師

5 最初の,真に家庭的なメディア機械

おわりに

 

第9章 台湾近代美術に描かれた子供たち—時局との関連に注目して[李 淑珠]

はじめに

1 1927~36年の子供描写

2 1937~45年の子供描写

3 子供群像に隠された公的イメージ

むすびに

 

第10章 1950年代韓国における家族イメージ—「安息」のメタファーとしての家族[金 伊順(鄭 賢娥訳)]

はじめに

1 朝鮮戦争以前の家族イメージ

2 朝鮮戦争以後の家族イメージ

おわりに

 

図版提供・複写元一覧

文献目録

あとがき

人名索引

 

プロフィール

中村俊春(なかむら としはる)

1955年生まれ,京都大学文学研究科教授

主要論文・著書:『ペーテル・パウル・ルーベンス—絵画と政治の間で』(三元社,2006年),展覧会カタログ『フェルメール《牛乳を注ぐ女》とオランダ風俗画展』(監修,国立新美術館,2007年),「近世ヨーロッパにおける平和と戦争のイメージ—80年戦争の時代のネーデルラントを中心に」(紀平英作編『グローバル化時代の人文学』下,京都大学学術出版会,2007年),「《ファン・ロイエン花鳥画》の作者再考」(『京都美学美術史学』9,2010年),「ルーベンス工房のヴァン・ダイク」(『京都美学美術史学』10,2011年)

 

平川佳世(ひらかわ かよ)

1968年生まれ,京都大学文学研究科准教授

主要論文・著書:The pictorialization of Dürer’s drawings in northern Europe in the sixteenth and seventeenth centuries (Peter Lang, Bern, 2009),「家族の肖像—クェンティン・マセイスの《聖女アンナ祭壇画》にみる理想の家族像」(蜷川順子編『初期ネーデルラント美術にみる個と宇宙』1,ありな書房,2011年),「スプランゲルのイタリア滞在—銅板油彩画の観点から」(『京都美学美術史学』10,2011年)

 

ジョン・ラフマン(John Loughman)

1966年生まれ,アイルランド国立大学ダブリン校美術史・文化政策学部上級講師

主要論文・著書:”Between reality and artful fiction: the representation of the domestic interior in seventeenth-century Dutch art” (J. Aynsley and C. Grant, eds., Imagined interiors: representing the domestic interior since the Renaissance, Victoria and Albert Museum, London, 2006); “New light on some portraits by Aelbert Cuyp” (The Burlington magazine, 139, 2008); exh. cat. In the presence of things: four centuries of European still-life painting (with Peter Cherry, Calouste Gulbenkian Museum, Lisbon, 2010)

 

ミルヤム・ノイマイスター(Mirjam Neumeister)

1967年生まれ,バイエルン州立絵画収集所,アルテ・ピナコテーク学芸員(フランドル・バロック絵画担当)

主要論文・著書:”Rubens und seine gemalten Kopien: eine Einfhrung in die Ausstellung” (exh. cat., Rubens im Wettstreit mit Alten Meistern: Vorbild und Neuerfindung, Alte Pinakothek, Munich, 2009); cat. Alte Pinakothek: flämische Malerei (Bayerische Staatsgemldesammälungen, Munich, 2009); cat. Holländische Gemälde des Barock im Städel 1550—1800, vol. 3, Küstler geboren nach 1630 (Städelsches Kunstinstitut, Frankfurt a. M., 2010)

 

安田篤生(やすだ あつお)

1958年生まれ,愛知教育大学教育学部准教授

主要論文・著書:「土佐派の犬追物図屏風について」(『美術史』135,1994年),「江戸時代における光琳像の変遷について」(上)(中)(下—1)(下—2)(『愛知教育大学研究報告』50,52,54,58,2001年,2003年,2005年,2009年)

 

田島達也(たじま たつや)

京都市立芸術大学美術学部准教授

主要論文・著作:「美人画に見る京美人」(『美術フォーラム21』15,2007年),「明治版画に見る京都・描かれた明治の京都」(丸山宏他編『みやこの近代』,思文閣出版,2008年),展覧会カタログ『京都日本画の誕生—巨匠たちの挑戦』(編著,京都市立芸術大学,2010年)

 

宮崎もも(みやざき もも)

1978年生まれ,大和文華館学芸員

主要論文・著作:「酒井抱一筆「八橋図屏風」に関する考察」(『京都美学美術史学』3,2004年),「酒井抱一の画業における国学の影響—「五節句図」に注目して」(『美術史』159,2005年),「素絢・南岳・井特の美人画について」(大和文華館編『女性像の系譜—松浦屏風から歌麿まで』,大和文華館,2011年)

 

エルキ・フータモ(Erkki Huhtamo)

カリフォルニア大学ロサンジェルス校芸術・建築学部教授

主要論文・著作:”Twin-touch-test-redux: media archaeological approach to art, interactivity, and tactility” (Oliver Grau, ed., Media art histories, The MIT Press, Cambridge, Massachusetts, 2007); “Touchscape: tactile and haptic interaction in the works of Sommerer&Mignonneau” (Gerfreid Stocker et al., eds., Christa Sommerer, Laurent Mignonneau: interactive art research, Springer, Vienna, 2009); Media archaeology: approaches, applications and implications, (with Jussi Parikka, eds., University of California Press, Berkeley, 2011)

 

李淑珠(り しゅくしゅ,Li Su-chu)

台湾明志科技大学視覚伝達デザイン学科助理教授

主要論文・著書:「台湾ローカルカラーの戦時動員について」(『美術史』161,2006年),「陳澄波図片収蔵与陳澄波絵画」(『芸術学研究』7,台湾国立中央大学芸術研究所,2010年),「陳澄波与普羅美術」(『台灣美術』85,国立台湾美術館,2011年)

 

金伊順(きむ いすん,Kim Yisoon)

1957年生まれ,弘益大学美術研究科准教授

主要論文・著書:The new horizon of contemporary sculpture (Hae-an Press, Seoul, 2005);

Modern and contemporary art in Korea (Chohyong Gyoyuk, Seoul, 2007); Imperial tombs of Daehan empire (Sowadang, Seoul, 2010)

 

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